塩化ナトリウム純度が99%以上である食塩に比べ、海塩や岩塩などの天然塩では塩化ナトリウムの含有量は94-97%とやや低く、味もきつい塩味ではなくややマイルドである。天然塩では結晶の固結を防ぐためのフェロシアン化塩が、必ずしも加えられているわけではなく、また食塩よりも水分を多めに含んでいることから、天然塩の粒子は食塩のようにさらさらではないことがある。
天然塩には天然の微量元素が確かに含まれてはいるが、通常の塩分摂取量からすると健康にへの影響に期待できる量ではないため、「天然塩はミネラルが豊富」とは言い切れない。
塩(塩化ナトリウム)は化学式でNaClと表記されるとおり、ナトリウムと塩素の化合物である。
塩化ナトリウムは、体の中の水分バランスを取って浸透圧を保つ重要な役割を担うほか、神経伝達や、消化に必要な胃酸の構成元素でもあり、そして骨を構成する極めて大事なミネラルである。成犬の体には、1kg体重当たり約2.3gの塩分が存在し、健康な成犬の1日の所要量は理想的には1kg体重当たり0.127g(体重10kgの犬で1.27g、50mgのナトリウムに相当)、最低でも体重1kg当たり0.076g(体重10kgの犬で0.7g、30-40mgのナトリウムに相当)とされる。1)
犬はヒトのように多く汗をかかないため、ヒトほどの塩分量を必要としないが、上記の必要最低量を極度に下回る塩分供給量が長く続くと体を維持することが難しくなり、多尿に伴う皮膚の乾燥や血量減少あるいはヘマトクリット値(血液中に占める血球の体積の割合を示す数値)の上昇などの脱水症状、体重減少、嚥下困難、神経過敏、舐め癖、スタミナ低下、心悸・呼吸数上昇といった欠乏症状が現れる。特に下痢や嘔吐が続く状況では、体内の塩化ナトリウムが流出し不足するため、必ず水分と一緒に補給しなければならない。
ナトリウムの過剰摂取に関しては、新鮮な水がいつでも飲める状況であれば、犬は体重1kg当たり2.5gの食塩を許容することが出来る。水分摂取の上昇は、体重1kg当たり1gの食塩摂取で見られる。1)
1)H. Meyer, J. Zentek: Ernährung des Hundes, 4., durchgesehene Auflage, Parey Buchverlag Berlin, 2001