古くから日本の食卓になくてはならない食材である昆布は、海藻の中でもコンブ科(学名:Laminariales)に属するものを指し、コンブ科には現在約128種が分類されている。日本で食用にされるのは真昆布(学名:Laminaria japonicaまたはSaccharina japonica)を中心としたもので、産地や外見によって利尻昆布(北海道利尻島)や日高昆布(北海道日高地方)、長昆布など名称が異なるだけでなく、それぞれ学名も異なる。英語でKelp(ケルプ)と呼ばれるものは、コンブ科の中でも特に大型に成長するものを指し、海中に群生して「森」を作るほか、長いものでは60mにまで成長する。
ほかの食用海藻類であるわかめや海苔、ひじきなどに比べ、コンブは幅広で長く、肉厚である。食用にされる昆布には天然昆布と養殖昆布とがあり、養殖のものは通常育成2年で出荷されるが、量販向けに育成1年で出荷される促成昆布がある。天然昆布と養殖昆布では粘りや風味などに差があり、料理や用途によって選ばれる。
乾燥した昆布に含まれる栄養素の中で最も多いのは、乾燥重量の約30%を占める食物繊維で、その中に含まれるアルギン酸は水溶性の食物繊維として整腸を促す。ミネラル類ではカリウムが最も多く、次いでナトリウム、以下カルシウム、マグネシウムと続くが、なによりも昆布の栄養価値の特徴は、ほかの食物からは摂りづらいヨウ素の豊富さにある。
昆布には(種類によって異なるが一般的に)100gあたり131mgのヨウ素が含まれ、これを犬のヨウ素所要量(健康な成犬で1日体重1kg当たり15μg)に比べて換算すると、体重10kgの犬であれば、約0.1gの昆布を摂れば1日の必要量がまかなわれることになる。
ヨウ素を長期にわたり多量に摂り続けると甲状腺ホルモン(チロキシン)の放出が制限され、それにより甲状腺機能が低下するので、ヨウ素供給源に昆布を用いる場合には摂り過ぎないよう注意が必要である。昆布よりもヨウ素含有量の少ない食材にはわかめ(ヨウ素含有量約10-20mg/100g乾燥重量)がある。
なお、天然・養殖に関わらず、昆布は海中で育つため、海がヒ素やカドミウムなど有害物質で汚染されている場合、昆布からこれら有害物質が検出されることがある。