銅は体に必要なミネラルの中で、鉄や亜鉛、マンガン、コバルトなどと並んで微量元素と呼ばれるミネラルの一つである。血液凝固や骨形成、神経の発育などに関わる多くの酵素を構成あるいは活性化する金属であり、代謝に欠かせない。
キレートとは、配位子と呼ばれる化合物が1つの金属イオンを中心に挟むこむ(あるいは包み込む)ようにして結合することをいい、配位子にアミノ酸あるいは部分的に加水分解されたタンパク質が結合している場合、この化合物をタンパク質キレートと呼ぶ。アミノ酸キレートとの違いは配位子に結合されているアミノ酸の分子量にある(アミノ酸キレートは分子量800以下)。1)
1980年代から90年代に相次いで報告された研究により、アミノ酸やタンパク質と結合させた亜鉛や銅などのミネラル成分は、有機酸と結合させたミネラルや無機ミネラルよりも吸収がよく体内に長期で留まる傾向にあることが分かった2)。以来、サプリメント食品やペットフード、動物飼料などへ添加されるミネラル成分は、アミノ酸やタンパク質と結合させた化合物が用いられることが増えてきた。
食品において銅は、牡蠣やホタテなどの貝類、エビやカニなどの甲殻類、牛や豚のレバーに多く含まれ、果物や野菜類にはあまり含まれない。
体に入った銅は、小腸上部粘膜から細胞内に取り込まれた後に血液まで運ばれ、主に肝臓に貯蓄される(体内の銅の3分の1は肝臓にある)。銅は長毛犬種の換毛期や授乳時の母犬、慢性の感染症にかかっているときなどには体内での需要が高まるが、蓄積されている銅が放出されることで、通常は急激な欠乏を避けられる。銅と同時に大量のカルシウムや亜鉛、鉄などを摂取したり、腸壁が傷んでいるときなどは、銅の吸収や利用効率が影響を受け、肝臓内の蓄積が不十分になる。
一方、ベドリントン・テリアやウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、ドーベルマン、ジャーマン・シェパード・ドッグでは、肝臓に銅が過剰に蓄積される遺伝的な障害(銅蓄積性肝炎)が起こることが知られているほか、肝臓障害の二次障害として同じような銅蓄積障害が起こることがある。このような場合には、フード中の銅の量を減らすと同時に亜鉛の供給量を増やすことが勧められる。
1)PROTEINATED AND CHELATED MINERAL COMPLEXES
http://www.ams.usda.gov/AMSv1.0/getfile?dDocName=STELPRDC5057630
2)Kuhlman G., Rompala R. E.: The Influence of Dietary Sources of Zinc, Copper and Manganese on Canine Reproductive Performance and Hair Mineral Content., J. Nutr. December 1, 1998 vol. 128 no. 12 2603S-2605S.
http://jn.nutrition.org/content/128/12/2603S.full.pdf+html