カモやキジといった、鳥をターゲットにした猟の片腕となるポインター、セッター(セターとも表記)、スパニエル、レトリーバーたちを「ガンドッグ」という。鳥を見つけたらポイントやセットしてハンターに鳥の位置を知らせたり、ガン(鉄砲)を構えたら鳥を飛び立たせたり、撃たれた鳥を回収(レトリーブ)したりするのが仕事。人間が鉄砲で撃つ猟をサポートする役割で、原則として自分の牙で獲物を殺して狩ってくる仕事ではないため、攻撃性は低く、人間との共同作業が大好き。人間の指示をいつも待っていて、そばで役に立ちたい気持ちでいっぱい。いつも飼い主の動きを見ている。
大型犬なので日本人はよく誤解しているが、ガンドッグの仲間は、性質面では人間大好きという点においてコンパニオン(家庭犬)にも向いており、欧米を中心に広く愛されている。
また、人間との共同作業が好きということは、人間への依存心が高いということでもある。そのため、分離不安(飼い主と離れると無駄吠えをしたり、排泄を失敗したり、破壊行動などを起こしたりして留守番ができない)になりやすい犬もいる。子犬の頃から、飼い主との正しい距離感や規律あるルールを教えることが大切だ。
あるいはレトリーバー種に多いのだが、運動不足で肥満になる個体も少なくない。人なつこさ、従順な勤勉さなどの性格面では、家庭犬にふさわしいガンドッグチームだが、体力的にはワイルドな猟犬。犬種によっては猟欲が高く、ゲーム(体力だけでなく知力も使う刺激)を欲するタイプもいて、それがないとストレスが溜まり、問題行動につながることもある。だから飼い主もワイルドでアウトドアな人でないと難しい。毎日の運動はもちろん、週末には山や海などに出かける体力と時間のある人向き。インドア派の飼い主は、残念だがガンドッグを選ぶべきではない。
また、ガンドッグやセント・ハウンドのように、人間と共に猟を行うタイプの犬種は、広大な山野で、自分の存在を人間に知らせたり、獲物を追い立てるために、野太い大きな吠え声が必要とされてきた。しかし、その大きな声のせいで、マンションや住宅密集地では近所トラブルの元になることがある。ガンドッグはトレーニングすればちゃんと無駄吠えしないよう理解できる犬だが、教える気合いと技量のない飼い主だと、犬も飼い主家族も不幸になる。