ガンドッグ同様に鉄砲を使った猟の相棒として、パック(群れ)で使うタイプ(ビーグルやフォックス・ハウンドなど)のほかに、半矢(弾は命中したが、致死になっていない状態)の獲物にとどめを刺したり、単独で自分の牙で噛みどめするセルフ・ハンターのタイプもいる(エルク・ハウンドやブラック・アンド・タン・クーンハウンドなど)。
前者は、イギリスやフランス原産のセント・ハウンドに多く、貴族の馬を使ったスポーツ・ハンティングのお伴というとイメージしやすいか。ビーグルなどはパックで生活しているので、犬同士も友好的に付き合えることが多い。かたや後者のタイプは、1頭あるいは少数のパックで使うことが多い実猟犬で、イノシシ、シカ、クマなどの大型の獣にも勇猛に立ち向かう気概がある。よって、犬の扱いに精通した人でないと、その強い猟欲やときに生じる攻撃性をコントロールするのは難しい。
共通していることは、ターゲットが、地面を走るウサギやキツネ、イノシシ、シカなどの四つ足の獣であること。地面に残った足跡臭や血のニオイをクンクンと嗅いで、獲物を探索・追跡し、見つける。その後、回収してくる犬種もいる。セント・ハウンドのニオイを追いかける集中力は素晴らしい。一心不乱で追いかけるので、そういうときは飼い主よりニオイに夢中。ビーグルやダックスフントを家庭犬として飼っても、公園などで何かいいニオイをみつけて探索・追跡を始めると、飼い主が呼んでも振り向きもしないことが多いのはそのためである。集中力があるというと聞こえはいいが、裏を返せばマイペースすぎで、頑固で、飼い主の指示が耳に入りにくい。飼い主との共同作業を好むガンドッグより、セント・ハウンドは自分で仕事を見つけ、それを黙々とこなすのが得意。すなわちトレーニングには、飼い主に忍耐が必要。
バセット・ハウンド。嗅覚を使う狩猟をする犬の末裔。どこまでもニオイを追いかけるタフなやつ。声も野太い |
セント・ハウンド2種。ブラッドハウンドとバセット・ハウンド(中)。大きな耳とたるたる皺とマイペース気質が特徴 |
また、野山に響き渡る大きな吠え声も特徴だ。獲物を見つけたときは、吠えながら追いかけていく「追い鳴き」をする犬種が多い。ビーグルは、広大な山野においてはその声をハンター達から「美声」と誉められ、猟犬として使われるときは大事な長所であったが、都市部で飼育する場合は近所迷惑な欠点とされてしまう。大きな吠え声は、人間が長い時間をかけて犬種改良していった結果なのであって、犬が悪いわけではない。大きな声で吠えるのは、セント・ハウンドの性だと知っておこう。