ボルゾイやサルーキのように、四肢が長く、マズル(鼻面)も細長く、ウェストがキューと絞られた特徴ある姿をしているサイト・ハウンド(視覚ハウンド)。視覚を使って、目で獲物を見つけて、目でロックオンして、追いかける狩りの仕方をする。このチームは、ガンドッグやセント・ハウンドと違い、鉄砲のない時代から人間と共に暮らし、馬に乗らず徒歩で行う猟の片腕として役立っていた。つまり、犬達は自分の足で駆けて、獲物を捕獲するという、ある意味野生動物に近いやり方で猟を行う古典的な猟犬である。サイト・ハウンドには、スプリンター型もいれば、長距離型もいるし、猟野は(犬の)原産地によって草原、山岳、砂漠とさまざま。獲物や活躍する環境に応じて、特化した能力を伸ばしていったと考えられる。
膨大な運動量を満足させてあげるのが、サイト・ハウンド飼い主の使命。満足いく運動さえ与えていれば、家ではおとなしく「猫のよう」だと言われる。外では「疾走」、家では「休息」という具合に、オン・オフがはっきりしている。人間と共同作業で猟をしていたわけではないので、人間への依存心は少なく、自主性があり、無駄吠えも少ない。家族には奥ゆかしくこっそり愛情表現をするが、ベタベタしてくるほどではない。甘ったれの犬がうっとうしい人にはちょうどよい。ほどよい距離感が心地よく、大人な関係が築ける。ただし、獣相手に闘いを挑む攻撃的な性質が残っている犬もいる。血統にもよるので、ブリーダー選びは慎重にしたい。
しかし、イタリアン・グレーハウンドのような小型サイト・ハウンドでもめちゃめちゃスピードが速く、転回のときにはかなり大きな弧を描く。大型サイト・ハウンドならなおのことである。日本でサイト・ハウンドを飼う際には、安全かつ広大な運動場にちょくちょく連れて行けるかどうか。これが最も重要な課題だろう。ただ、自由運動で疾走するサイト・ハウンドは神々しいほど美しく、このうえなく嬉しそう。思いきり走らせてあげる場所を提供することは、飼い主として最も幸せを感じる瞬間でもある。
ショードッグの華として人気の高いアフガン・ハウンドやボルゾイのような長毛種は、体の表面積も広いぶん、日々のブラッシングやシャンプー後のドライヤーは気が遠くなるほど大変だが、その努力すらも苦労とは思わないファンシャー(愛好家)向き。毛の手入れは面倒だけど、あのフォルムや性質が好きという人は、スムースヘアのグレーハウンドやサルーキなどを選ぶとよい。