スコットランド地方で、農夫がネズミやキツネ、イタチなどの害獣退治用に使っていたケアーン・テリアが最も古いテリアと言われる。イギリス、アイルランド発祥のムク毛の犬が、いまや世界中で愛されるテリアの基礎と考えてよいだろう。「テリア」はラテン語での「地面」を意味する「terra」(テラ)に由来しており、テリアはその名のとおり、地面に穴を掘って暮らす小動物を狩り、牙で殺す生粋の猟犬である。ついでに言うと、だから穴掘りも大好き。サイズが小型のものが多いため、日本ではペットショップでよく売られているが、そもそも彼らはか弱い犬ではなく、愛玩犬や抱っこ犬になるつもりはさらさらない、血気盛んで気の強い、しっかり者なのだ。
小型だが勇敢で自信たっぷりで、負けん気が強いテリアに、ブルドッグやマスチフなどのどっしりした犬種を交配して闘犬やピューマ狩り犬が作られた。ブル・テリアやアメリカン・ピット・ブル・テリア、ドゴ・アルヘンティーノなどである。闘犬チームについては別のところに記載するが、とにかくテリアの興奮度、自我の強さが、燃える闘魂の基本であることは忘れない方がいい。
テリアは、ポジティブな表現をすると、快活でやんちゃで好奇心旺盛。機敏で小回りがよく効き、足腰も丈夫。反応よろしく、抜け目なく、利口。独立心があり、甘ったれではないので留守番が寂しいとも言わない。警戒心も強く、番犬のようなアラームドッグになる。
このようにテリアは、愛くるしい大きな黒いお目々で、抱っこしたくなる愛らしさの詰まった魅力的な犬だが、ぬいぐるみになる才能はゼロ。正しく育てないと、とんでもない小さな暴君になる。テリアを可愛さだけで選んでしまい、後悔している人が多数いる。気の弱い、優しすぎる飼い主さんにはオススメできない。そのプライド高きテリア・キャラクターを理解し、愛してこそ本物のファンシャー(愛好家)である。
またテリアの特徴でもあるモサモサのラフヘアー(粗毛)は、毎月のようにトリマーのお世話になる必要があるので、被毛の手入れ費用がかかる。また元来気の強い犬なので、ブラシや櫛の嫌いな犬に育ててしまうと、あとでトリマーを噛みつくような面倒な犬になる。硬めの毛はもつれにくいが、子犬の頃からブラッシングするくせをつけておくことは大事。テリアのエネルギッシュな性格は好きでも、ラフヘアーのメンテナンスの自信がない人は、スムース・フォックス・テリアやミニチュア・ピンシャーなどのスムースヘアー(滑毛)のタイプを選ぼう。