柴や秋田など、日本人なら誰でも知っている日本犬チーム。古来より日本に住んでいるから、わが国の気候風土に最もマッチしている。ただし、雪深い山間部などの寒い地方で固定された北海道犬や秋田犬などは、厚いダブルコートのフサフサの被毛をまとっているので、国内でも暑い地域で飼えば、夏はエアコンが必要となる。
FCI(国際畜犬連盟。本部はベルギー)およびJKC(ジャパンケネルクラブ)に公認されている日本犬は、秋田、甲斐、紀州、四国(土佐と呼ばれていたこともある)、柴、北海道の6犬種。この6犬種は天然記念物にも指定されている。また、FCI・JKCには闘犬として犬種改良された土佐(土佐闘犬)も公認されている。土佐は、四国犬とさまざまな洋犬種を混血させて作出された。そのほかFCIとJKCでは、アメリカン・アキタと日本スピッツも公認されているが、本稿での日本犬チームは、日本古来の犬に限定する。
さて、土佐を除き、日本犬の外貌は似ており、原始的な犬の姿を色濃く残している。小型は柴犬だけ、大型なのは秋田犬だけで、あとの日本犬は中型のサイズ。キリッとした立ち耳。巻き尾や差し尾(鎌状に曲がって上向きに立つ)。被毛は、上毛は硬く真っ直ぐで、下毛は柔らかく密生したダブルコート。そうした特徴からアラスカン・マラミュートやサモエドなどと同じ北方スピッツ系をルーツに持っていることが分かる。でも日本犬の仕事はソリ犬ではなく、クマやイノシシ、シカを狩るための獣猟犬。秋田犬はマタギの犬として有名だ。
日本犬は性格もだいたい似ている。利口、勇敢、沈着冷静、頑固、感覚鋭敏、警戒心旺盛。我慢強いせいかキレイ好きのせいか、排泄のトレーニングもしやすい。そしてなんといっても特筆すべきは、一人の主人に忠義を尽くすタイプであること。他人には心を許さないし、愛想も振らない。ほかの犬に対して喧嘩を売らないよう教えることもできるが、そもそも日本犬自身が、ほかの犬と仲良く遊ぶ必要性を感じていない。日本犬を飼っておきながら「みんなと仲良くドッグランで遊ばせたい」と願う飼い主がたまにいるが、日本犬はラブラドールのようなフレンドリーな洋犬にはなれないし、なる必要もない。その媚びない強さ、野性味、忠誠心の高さが日本犬の魅力なのだ。欧米で柴犬や秋田犬のファンシャー(愛好家)が多いのは、洋犬にない特別な魅力を感じ取っているからに他ならない。「みんなと仲良し」「お客様にも友好的に」と望むなら、最初から日本犬を選ぶべきではない。
トレーニングのコツも、洋犬とは異なる。自分が親分と認めた人以外の言うことは聞かない。だから毎日散歩に行き、ごはんをあげているのがお母さんでも、お母さんの言うことは全然聞かず、お父さんが散歩にたまに連れ出すときだけ驚くほど礼儀正しい犬になったりする。いかに犬の尊敬を得られる飼い主になるか、そこが重要なポイントである。体力的にも精神的にも犬よりも強くないと飼い主に忠誠を尽くしてくれるわけもない。柴犬はそこまで強情ではないので、日本犬の中では飼いやすい部類に入るが、それ以外の日本犬は、我が強くてもっと手厳しいので、一筋縄ではいかず、素人向きではない。猟欲が強いものは、荒々しい性質も持っている。日本犬を飼いたいのなら、前もって経験者によく話を聞くことが不可欠だ。
いちばん小型の柴犬でも、頑健で持久力がある。日本犬はもともと獣猟犬だから、散歩が大好きで、山で走るのも大好きだ。硬めの毛はもつれにくいが、春と秋の換毛期には大量の抜け毛がある。しっかりブラッシングが必要。