1980年代後半に連載されていたマンガの影響で、一時日本でも流行したシベリアン・ハスキーはじめとするソリ犬達。姿は、秋田犬などの日本犬ともよく似ているが、それは祖先を同じくする北方スピッツ系だからである。そのため日本人は、なんとなく親近感を感じるのかもしれない。
しかしながら、温帯湿潤な気候の日本ではなくロシアやアラスカの寒い地方出身の犬は、雪や氷に負けない、厚いダブルコートの被毛に包まれている。だから冬は大好きで、雪遊びは至上の喜び。そのかわり日本の蒸し暑い夏はかなり厳しい。24時間冷房完備の部屋で過ごしているソリ犬たちの話はよく聞く。熱中症になったり、厚い被毛で蒸れて皮膚炎を起こしかねないので、日本で飼育する場合は、夏場の室温・湿度の管理は欠かせない。梅雨前の初夏の頃から、エアコンの電気代を覚悟しておこう。また夏の散歩は、日の高い時間に行くのは無理。早朝5時起きを覚悟すべし。反対に、冬場は彼らにとってベストシーズンなので、暖房をつけることを拒まれることがある。むしろ、飼い主が室内でも上着を着る必要があるかもしれない。
ソリをひくのが仕事だったので、運動量は多い。どこまでもどこまでも走っていきたい。持久力があり、タフで、力持ち。しかも引っ張るのが仕事ゆえ、飼い主のリードも引っ張る。飼い主も力が強く、また長時間の散歩に付き合えるタフな人がいい。サイクリングのお伴も喜ぶ。ソリ犬の莫大な運動量を、いかに満たしてあげるかがポイントだ。運動量さえ満たせば、問題行動は少ないタイプ。たっぷり運動をさせて、いい子に育てよう。ソリ犬だからプル競技(引っ張る競技)が得意で、日本でもファンシャー(愛好家)によるソリ犬が喜ぶドッグスポーツがいろいろ行われている。雪の季節の犬ソリレースやスキージョアリング(飼い主を引っ張りながらクロスカントリースキー)、雪のない季節では自転車を引っ張るレースや荷車引きなどだ。こういうドッグスポーツに連れて行ってくれる飼い主だと、ソリ犬の心と体は満ち足りる。
大柄なサイズなので誤解を受けやすいが、本当は人なつこい。団体生活が得意で、ひとつの家族や場所に固執する生活パターンではなかったせいか、誰にでもなつく。テリトリー意識も薄い。よって番犬としての才能はないし、警戒吠えもしない。ただ北欧スピッツ系は、遠吠えをしたくなる性質が残っている犬もいる。
ほかの犬ともいちいち喧嘩しない友好的な犬が多い。ドッグランでもそつなく犬たちに溶け込み、うまく団体行動をしている姿をよく見かける。順位性をあまり気にしないので、多頭飼育で問題になることも聞かない。ただし、やはり去勢をしていないオス同士や社会化不足の場合はこの限りではない。
室内飼育の場合は年中抜け毛があるが、とくに春と秋の換毛期には、大量の抜け毛がでる。部屋の掃除機かけには気合いが必要。ブラッシングをしっかりして、抜け替わりの毛を取り除いてあげることも、皮膚の健康を保つために欠かせない。でも、もつれやすい毛質ではないし、シャンプーも自宅でできる。おうちのお風呂場の配水管を大量の毛で詰まらないよう気をつけること。