ガードドッグは、総じてみな強くて逞しい、心も体も鋼のような犬である。原型は、オオカミから家畜の群れを守っていた護羊犬や護畜犬。人間の家族そのものがオオカミや賊に襲われないようにも目を光らせた。犬が、人間との関わりを持った最も古典的な仕事といえる。家族には献身的で忠実だが、よそ者にはまったく心を許さず、警戒心と防衛本能をむき出しにする。寒い地方で活躍したのはチベタン・マスティフやマレンマ・シープドッグといった長毛のマスチフ種で、暖かい地方ではボルドー・マスチフやナポリタン・マスチフなどの短毛マスチフ種が主流。体重が50kgを超える重量級の犬ばかり。いまも、大昔と変わらず、そのままの姿と性質で、人間と共に暮らしている犬種も多い。
また近代では、優れた防衛本能を利用し、これらの犬をベースに護衛犬・番犬として犬種改良された犬もいる。改良された犬達はマスチフ系らしい威風堂々とした威厳を残しながら、俊敏性の高いボディラインになっている。たとえば、南米に渡って、今なお広大な農園や大邸宅を警備しているフィラ・ブラジネイロ(ブラジリアン・ガードドッグ)やドイツが創造した自慢のガードドッグであるドーベルマンなどだ。
最高の番犬になることはお墨付きだが、住宅が密集する日本で果たしてその才能をうまく活用できるのか、問題はそこである。犬でも人でも喧嘩相手の通らない、野中の一軒家に住んでいるときは最高の伴侶となるが、狭い住環境だとその実力が高すぎて、必要のないタイミングでの警戒吠えや攻撃行動などの問題を起こす可能性がある。
ただ、超大型犬の昔ながらの護羊犬は、大きさのわりに、それほど運動欲求は高くない。猟犬や牧羊犬のように走り回るのが仕事の犬ではないからだろう。岩のごとく、静かに身を伏せ、目を光らせているイメージだ。もちろん有事のときは電光石火のごとくすばやく襲うが、普段の動きは緩やかである。ただし行動範囲が狭いと運動不足にはなる。広い庭や邸宅が仕事場としてはお好みのようである。自転車引きのような走らせる運動は必要ないが、人間と長時間歩く運動はもちろん必要。
ちなみに、動物病院でも同様のことが起きている。診察台や入院室のケージなどの設備面の関係か、あるいは不慣れなために超大型犬種は診療を断られることがある。また麻酔の事故も起きている(麻酔薬を多く使用してしまい死亡するなど)。超大型犬の臨床経験豊富な獣医師を確保することが大事。また、春先から晩秋まで行うフィラリア予防薬はじめ、投薬代や麻酔費など体重換算のものは獣医療費が高額になるので、経済的負担もほかの犬種より多くなる。