日本で不動の人気のあるチーム。なぜ、欧米に比べて、こんなに日本では小型犬の需要が高いのか。住環境が狭いので大型犬は飼えないとか、土足禁止のライフスタイルなので、大きい犬の室内飼育が衛生的に受け入れがたいなどと言われるが、本当にそれが理由なのだろうか。マンハッタンなどで庭付き一戸建てに居住しているわけではなくても、欧米では大型犬がポピュラーである。庭がないから、小型犬しか飼えないと思うのは謙遜のしすぎだ。
狩猟民族だった欧米人にとって、犬は猟や牧羊の片腕として生活の中になくてはならない存在だったが、農耕民族の日本人にとって、犬は生活必需品ではなく「愛玩」の仕事だけでよかったせいだろうか。盆栽や金魚のように、小さいものを愛でて慈しむ精神があるからだろうか。歴史や文化や民族性などの違いかもしれないが、とにかく日本人の大部分は小型犬が大好きである。
裏を返せば「小型犬は可愛いけど、大きい犬はちょっと怖い」という風潮も未だにあり、せっかく集合住宅でペット飼育OKの物件が増えても、体高や体長制限などによって小型犬種しか飼育を認めないケースも多い。そうした意味の住環境の不自由さから、小型犬種を選ぶしかない、と諦める家庭はある。
かたや、「大型犬は散歩が大変だから」との理由で、軽い気持ちで小型犬を選んでしまう人がいる。無責任極まりないペットショップは「小型犬は、散歩は行かなくていい」などと調子のいいことを言って、子犬を買ってもらおうともする。言うまでもなく、それは大きな間違いだ。
また運動欲求量とは関係なく、小型愛玩犬であっても犬は犬。散歩は排泄のためではなく、運動と気分転換(心の刺激)と社会化(社会勉強)のために必要なのである。社会勉強をさせてもらえない犬は、他人や他犬や自動車などのさまざまなものに触れる経験が乏しいために、健全な心が育たず、情緒が不安定な犬になりやすい。びびりで神経質な犬が多く、そのため無駄吠えしたり、恐怖心から咬んだりする問題行動を起こしがちになる。人間の子供でも、いろいろな人とコミュニケーションする練習をしたり、社会経験を積ませたりしないと、立派な大人になれないのと似ている。
そもそも性格面では、小型愛玩犬チームやテリアチームの方が大型犬よりも落ち着きがなく、気位が高い犬種が多いので、初心者がしつけをするのは結構至難の業だったりする。小型犬が初心者に向いていることがあるとしたら「リードを引っ張られても、あまり飼い主が転ぶことはない」くらいではないだろうか。
小型愛玩犬の能力を軽んじてはいけない。教えれば、ほかの犬種にできることはほぼクリアする。とても賢く、やればできる犬なのである。小さいから頭が悪い、どうせ覚えられない、無理をさせるのは可哀想、と何も教えないのは飼い主のレベルが低く、小型愛玩犬の能力を過小評価するのは「飼い殺し」に過ぎない。
もうひとつ大事なこと。流行犬種になり乱繁殖されてしまったために、遺伝性疾患はじめ病気がちな子が多いのも、小型愛玩犬チームの悲しい特徴。ペットショップでの衝動買いは禁物だ。病気が多い子だと、獣医療費もかさむし、飼い主の心労も増える。遺伝性疾患の場合は、一生治らず死ぬまで付き合っていくしかない症例も多い。犬は生き物なので、病気を100%回避することはできないが、飼い主の努力と事前の予習しだいで病気のリスクの少ない犬を選ぶことはできる。心身ともに健康な犬を探すことは、犬と暮らす喜びのためのやりがいのある第一歩と思って、よく検討してから入手先を選んでほしい。また賢い飼い主が増えれば、パピーミル(子犬工場)や悪徳なペットショップが減ることにもつながる。