「愛玩犬=小型犬」と思っている人は多いが、本来愛玩犬とは「人間に可愛がられるのが仕事の犬」である。大きさは関係はない。また、抱っこできるかどうかが愛される基準でもない。裏を返せば、図体はでかいくせに人が大好きで、疑うことを知らず、番犬にもならない犬がいる。大きいけれど、優しくて、穏やかで、人間が大好き。子供にも寛容。攻撃心や警戒心も乏しく、朗らか、大雑把、脳天気、平和主義。飼いやすいので、欧米でいつも上位にランクされる犬種もいる。小型愛玩犬に比べて、キャンキャンと無駄吠えしたり、チャカチャカ動き回ることもないので、落ち着いたドッグライフを望む人に最適。日本ではあまり注目されないくくりだが、欧米では昔からファンシャー(愛好家)は多い。
もっとでかいサイズの愛玩犬もいる。最も世界で有名な「優しいジャイアント」といえば、グレート・デーンだ。勇猛さを自慢したがる時代には、断耳され、怖そうな顔つきにされていたが、いまヨーロッパでは断耳はすでに法で禁止され、本来の穏やかな伴侶犬として根強い人気を誇る。7〜8歳の女の子がリードを持っていて、その子の歩くスピードに合わせてゆっくり歩くグレート・デーンをカリフォルニアで見たことあるが、本当に強くて大きいものは、小さく弱いものを守り、かばい、優しい。その言葉どおりなのが大型愛玩犬だ。レオンベルガーやニューファンドランドも朗らかでジェントルないい犬だ。
また従来はガンドッグであるが、すでに猟のお伴をしていた時代が遠のき、いまや盲導犬や家庭犬として繁殖計画を組まれているラインの、ラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバーも、猟欲は薄れて、温和でフレンドリー。だから猟が趣味ではない一般家庭にあれだけ普及しているのである。ラブやゴールデンも、血統によっては大型愛玩犬チームと兼務させてもよいかもしれない。
ただし、体重で換算する獣医療費(フィラリアの薬代や入院費など)や、大きなスペースを占有することになるためペットホテル代などはどうしても高額になる。自家用車も、彼らを乗せることができるワゴン車やワンボックス車などの大きな車が必要。また彼らはバタバタと室内で走り回るタイプではないが、やはりワンルームマンションで一緒に住むには無理がある。さらに言うと、超大型犬で改良された歴史の長い犬種は、股関節形成不全などの遺伝性疾患を始め、骨関節の病気になりやすいことは否めないので、階段や段差のある生活は好ましくない。よって住環境の制限も生じる。住環境や車などのハード面の整備ができないといけないので、それなりの経済力も必要。
そのほか、動物病院やトリミングサロンなどで、大きすぎて断られることもある。そして老後に寝たきりなどの介護が必要となった場合、サイズが大きい分だけ、寝返りさせるのが大変とか、床ずれができやすいなど、超大型犬ならではの苦労もある。日本でポピュラーに飼育されている犬ではないだけに、飼い主は意識的にいろいろと情報収集することが大事。超大型犬ファンシャー(愛好家)同士のネットワークに加わり、情報交換をするとよい。
大きいなりの苦労はあるが、それだけ一緒に暮らす喜びもビッグサイズ。日本でももっとその魅力が広がるといいなと願うチームである。