「イノンド」という馴染みのない和名がついているこのセリ科の植物は、むしろ英名のディル(Dill)のほうが知名度が高いだろう。学名はAnethum graveolens。ヨーロッパでは、サーモンなどの魚料理の付け合わせや野菜の酢漬けに香草として使われることが多く、種子もまた薬草として用いられる。
ディルの葉や種子には2-4%ほどの精油が含まれ、そのうち約60%はカルボン、そのほかリモネン、β-フェランドレン、テルピネン、アピオールである。またディル独特の香りを作るのは、ヘキサヒドロ−ベンゾフラン誘導体である。
食欲増進や痰切り、抗菌、そして平滑筋(とくに消化器官壁)の痙攣を沈める作用があり、消化不良のときなどに効果的である。