体内に摂り込まれたビタミンAは、食物の脂肪成分とともに腸壁を通って血液へ入り、リポタンパク質によって体の各組織または蓄積臓器である肝臓や腎臓へと運ばれる。動物の体の中のビタミンAは、多くの場合ビタミンA酢酸塩(別名:ビタミンAアセテート)という化合物として存在するため、直接動物組織から抽出したものだけでなく、市販の栄養補助剤(サプリメント)など合成されたビタミンA酢酸塩がビタミンAとして多く用いられる。
犬のビタミンA所要量は、犬の年齢や運動(あるいは使役)そして健康状態によって異なるが、成犬の平常時には体重1kg当たり1日75−100IU(国際単位)、子犬や高齢の犬あるいは病気・妊娠中・授乳中の犬では、体重1kg当たり1日250IUが目安とされている。
ビタミンAは体内に蓄積されるため、例え供給が足りなくても1〜4か月程度であれば体内に蓄積されているビタミンAを使って不足を補うことができるが、その蓄積分が底をつくと欠乏症として結膜炎や角膜の白濁が見られたり、あるいは感染症にかかりやすくなる。また、子犬や若い犬では成長障害や骨格障害などが現れる。
その逆に、長期間にわたりビタミンAを多く摂り続けると体内に蓄積され過ぎて、神経過敏や高カリウム血症、骨構成物質の分解による骨折傾向の上昇などの過剰症が現れるが、犬は血中でのビタミンA結合構造が特別なため、体重1kg当たり1日15000−30000IU(鶏レバー100ー200gまたは牛レバー1.3ー2.7kgに相当)を3か月にわたって摂り続けても過剰症は見られず、過剰といわれるビタミンAの量は体重1kg当たり30万IU(鶏レバー2.1kgまたは牛レバー27.2kgに相当)と、ほかの動物よりもかなり高い。1)
また犬の体は猫とは異なり、ニンジンや野菜に含まれるβ-カロチンを摂ることで、必要に応じて体内でビタミンAに変換できる。
1) H. Meyer, J. Zentek: Ernährung des Hundes, 4., durchges. Aufl., Berlin, Parey, 2001.