葉酸(旧名:ビタミンB9)はビタミンB群の一つに数えられ、熱と光に弱い性質を持つ。とくに酵母と小麦胚芽にはビタミンB群とともに多く含まれるほか、ブロッコリーやホウレンソウ、トマトなどの緑黄色野菜や、卵黄やナッツ類にも多く含まれる。パラアミノ安息香酸は、葉酸の構成成分。
食物と一緒に摂り込まれた葉酸は、小腸中部で特別なキャリアによって血中に運ばれ、細胞内でテトラヒドロ葉酸に変換されて酵素反応の補酵素として働き、細胞分裂に関与する。また腸内細菌によっても葉酸は多く生成されるため、健康な成犬であれば食物と一緒に摂る葉酸量はほんの微量(体重1kg当たり1日約4μg=茹でブロッコリー約3gに相当)で十分である。成長期の若犬や妊娠中の母犬では、その代謝に合わせて所要量は倍に増え、また母犬の葉酸は胎児の赤血球と血漿に濃縮され、子犬が生まれたあとにリザーブとして使われる。
葉酸が不足すると食の嗜好が変わったり、低色素性貧血、低白血球症、抗体生産の遅延などが起こることが実験的に確認されている。また人間や猫においては、妊娠中または授乳中の母体の葉酸不足により、子どもに不十分な成長度や貧血、低血小板血症、舌の創傷などが起こることから、犬でも妊娠/授乳中の葉酸不足は、奇形の原因になることが懸念される。