
人間とは異なり犬においては、紫外線による皮膚内での7-デヒドロコレステロールからコレカルシフェロールへの変換は行われず、植物性の食物に含まれるビタミンD2が動物性食物に含まれるビタミンD3とほぼ同じ効果をもたらすことが知られており、それぞれ肝臓と腎臓で本来の有効活性物質である1,25-ジヒドロキシコレカルシフェロールへと変換される。
犬のビタミンDの所要量はカルシウム所要量とリン供給量に左右され、成長期の犬で理想的な供給量および理想的なカルシウム:リン比率においては体重1kg当たり1日最大20IU(国際単位)とされる。カルシウム供給が少なく、またカルシウム:リン比率が崩れている場合、ビタミンDの所要量は上がる。健康な成犬では体重1kg当たり1日最大10IUの摂取で十分であるが、妊娠中あるいは授乳中の母犬では成長期の犬と同く体重1kg当たり1日最大20IUが必要とされ、また胆汁の回収障害や進行性腎疾患などでも、多めのビタミンD摂取が必要である。
なお脂溶性ビタミンであるビタミンDは体に蓄積されるため、過剰な摂取により高カルシウム血症や高リン酸血症、動脈硬化、頻尿、血便といった過剰症が現れるほか、長期にわたって毎日体重1kg当たり1万IU、または1回に体重1kg当たり20万IUのビタミンD3の摂取により腎石灰沈着症が観察されており、通常の所要量の10倍を超える量の摂取は禁忌とされている。