ビタミンKとして働く物質には植物由来のK1(フィロキノン)と腸内細菌が作り出すK2(メナキノン)、そして化学合成により作り出されるK3(ジメチル-1,4-ナフトキノンまたはメナジオン)などがあり、このうちK3は体内で腸内細菌により分解されて活性のあるビタミンKに変わるためプロビタミンとも呼ばれる。ビタミンK3には、水への溶解性を上げるためにソディウムビスルファイト(Sodium bisulfite、重亜硫酸塩または亜硫酸水素ナトリウム)と結合させた化合物などもある。自然な食物では、小松菜や春菊などの青菜類と納豆に多く含まれる。
犬では食餌と一緒に摂り込むよりも、腸内細菌によるビタミンK生成による供給の方が多いとされるため、健康な成犬では食餌中に含まれるべきビタミンK所要量は体重1kg当たり一日10μgと、腸内細菌の育っていない生まれたての子犬(体重1kg当たり一日20μg)に比べて少なくて済む。腸内細菌の作り出すビタミンKのおかげで、食餌内容に関わらずビタミンK不足は起こりにくいが、抗生物質などの投与によって腸内細菌が減っている状態や害獣(ネズミ)駆除薬として使われるビタミンK拮抗剤ジクマロールの摂取事故により、二次的なビタミンK不足に陥ることがある。また妊娠中の母犬のビタミンK供給が不十分であると、新生子犬に血液凝固障害が見られる。
なお、マウスを使った毒性実験(LD50)ではビタミンK3の過剰な摂取(1kg体重当たり500mg)は中程度の毒性を示すという結果があるが、発がん性や胎児へ与える影響などの詳しい毒性研究はなされておらず、明らかではない。1)
1)Bundesinstitut für Risikobewertung (BfR) "Einsatz von Vitamin K in der Tiernahrung" von 15. Januar 2004
http://www.bfr.bund.de/cm/343/einsatz_von_vitamin_k_in_der_tierernaehrung.pdf