「丹波の黒豆」で有名な黒大豆(または黒豆)は大豆の改良品種のひとつで、皮に天然抗酸化物質のアントシアニンを含むため黒く、それだけに普通の大豆よりも栄養的価値が少し高いといえる。
ほかの豆類では成分の大部分を炭水化物が占めるのに対し、大豆は「畑の肉」とも呼ばれるほどタンパク質が豊富で、乾燥大豆中の約35%を占め、炭水化物はそれよりも少ない約28%程度にとどまる。そのほか約19%の脂質(うち10%以上がリノール酸やリノレン酸などの多価不飽和脂肪酸)、約17%の食物繊維、ビタミン類(B群、E)、ミネラル類(カリウム、リン、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛)などを含む。大豆はまた植物性ホルモン(フィトエストロゲン)のイソフラボンを含むことでも有名で、この成分は雌性ホルモンであるエストロゲンと似た作用がある。そして納豆は、納豆菌の働きにより、ビタミンB群とKが大豆よりも多く含まれる。
納豆菌は、発酵によりビタミンを作り出すだけでなく、大豆タンパクの約50%を旨味成分(アミノ酸)のグルタミン酸やたんぱく質のムチンなどに作り替え、特にムチンは納豆独特の粘り成分となる。ムチンは糖タンパク質(たんぱく質に糖が結合したもの)で、粘る性質から胃壁や腸壁に付き、粘膜表面を保護する作用がある。また、納豆菌からはナットウキナーゼなど酵素も多く出され、血栓を溶解したり、アルツハイマー症の原因となるアミロイドの沈着を分解したりすることが知られており、現在は納豆の持つ抗がん効果についても研究調査が進められている。
生の大豆を絞って脂肪分を抽出した後の絞りかすは脱脂大豆と呼ばれ、大豆に本来含まれている成分より脂肪分が取り除かれた分、タンパク質量や食物繊維などの成分比率が高くなっている。
また大豆には、ほかの豆類同様に天然の防虫抗菌物質であるタンニンやレクチンも含まれるため、食用には必ず加熱を要する。犬では大豆に含まれるオリゴ糖成分を消化することが出来ないため、大腸で発酵しおならの原因となったり、便が軟らかくなるほか、多量の摂取により腸内でガスが多く発生し、鼓腸症の原因となり死に至ることがあるので、摂取量には十分注意が必要である。
大豆は、アメリカで1930年前後に遺伝子組み換えを施した品種の栽培試験が始まって以来、現在ではその栽培シェアの94%が遺伝子組み換え品種である。また、カナダやメキシコ、アルゼンチン、ブラジル、オーストラリア、中国、韓国、台湾など各国のほか、日本でも遺伝子組み換えされた品種が栽培されている。日本では食品を対象に、遺伝子組み替えされた大豆原料が5%以下の混入である場合のみ「遺伝子組み換えでない」と表示しても良いことになっているが1)、ドッグフードはその表示の対象外であるので、どのような原料が使われているのかを原材料表示からは知ることが出来ない。
1)農林水産省 遺伝子組み換え食品の表示
http://www.maff.go.jp/j/fs/f_label/f_processed/gene.html